勾留の執行停止

 警察の取調室で、取調官が重要参考人に「カツ丼」をご馳走するといった場面は本当にあるのでしょうか。

 踊る大捜査線の第1話中、あり得ない話として仮想シーンの中で出てきました。大昔なら、本当にあったのかも知れませんが、今だと利益誘導だとして供述の任意性が争いになるかも知れませんし、便宜供与ということになるかも知れません。
  警察に勾留されている被疑者の親が事故で死亡し、一時その御遺体が、たまたま同じ警察の遺体安置所に安置されるということがありました。
 被疑者は一目、顔を見てお別れしたいといったのですが、警察は便宜供与になるからといって認めてくれませんでした。誰が考えても便宜供与になるはずはありませんが、問題にして大声を出す人がいるかも知れません。また、これは便宜供与にならなくても、ではどこまでなら可能なのかという話になってしまうと、簡単ではないのかも知れません。
   それでどうするかというと、弁護士が裁判所に申立をして、裁判所から検事さんの意見を聞いて裁判所が「勾留の執行停止」の決定し、警察が被疑者を自宅まで連行して、自宅でご遺体と面会するということになるのです。
 細かく説明すると大変ですが、とにかく何やかやで7時間くらいかかって決定を頂きました。平日なら当たり前のことなのですが、たまたま土曜日で裁判所も検察庁もお休みでした(私は土曜日でも通常通り仕事をしています)。
 私の想像するところでは、当日の当番の裁判官が官舎から裁判所にお出ましになって、当番の検事さんに電話連絡して意見を聞いて決定してくれたという手順があったはずです。翌日、通夜の前、30分だけ面会を許されました。
  私には申立が認められなかった古い記憶があるのですが、記憶違いなのでしょうか、今回は、当たり前のように認められました。要件は、刑事訴訟法に「裁判所が適当と認めるとき」と定められているので、裁判官の判断次第なのです。被疑者に当然の権利というものがあるわけではありません。
 裁判員裁判になってから、刑期が実感5割増しという重罰裁判で、犯罪者に厳しい時代になりましたが、こんな場面ではヒューマニズムと言うことなのでしょうか。本当にヒューマニズムなら、黙って警察で会わせてほしいものです。